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桂馬君にはここは是非一つ解脱する方向でお願いしてみたい

神のみぞ知るセカイ」第六巻が先日発刊された。

神のみぞ知るセカイ 6 (少年サンデーコミックス)

神のみぞ知るセカイ 6 (少年サンデーコミックス)

内容を産業でまとめると「『リアルなんてクソゲーだ 僕が好きなのはゲーム女子だけさ』と断言してはばからない主人公が、落ちモノ系お約束進行によりリアル女子多数を”攻略”する羽目になった。その各女子とのエピソードを短編形式で綴っている連作形式作品」というあたりか。表面的な設定を見るだけならばある意味平凡と言えなくもないが、本作はリッカード尺度的に言えば面白さ平均4.5くらいを世間から与えられている。面白さの中身を分析してみてもいいが、それを作品を知らない他人が読んで何か得られるかと言えば脳内のエントロピーが増加するのが関の山だろう。よってここでは「何が面白いか」を語ることはしない。ただ黙って、気になる人は一巻だけでも買ってみることを推薦しておこう。

#読んだ人が「どう面白いのか」を語ったらこうなるのかというのは、下のエントリを見てみるのがいいだろう。
http://d.hatena.ne.jp/houroumusuko/20091014/1255466873
各巻4,5回くらいは通読していた自分の場合はそうだそうだと思いながら読んだが、未読の人には意味不明だと思われる。ただ、「id:houroumusuko はこの作品を絶賛していて、絶賛をするにあたってそれなりに客観的な根拠を提出出来る作品だ」ということは伝わると思うので、購入検討の一助にはなるだろう*1

前置きが長くなったが、そういう訳で以下神知る既読者・かつ上掲エントリを読んだ人向けの内容が続く。このエントリが万人向けでないというなっがーいメタ情報ここまで。

上掲エントリ後半での話をまとめると、「主人公桂馬は自身の属する作品世界のリアルに対して、リアルを外部から見ている存在であり、同時にリアルに拘束されている登場人物でもある。リアルに拘束されるという属性は変更不能なので、その問題への解答に期待」ということになる。id:houroumusuko の見解では

「不合理な現実を前にして、自らの理想と現実をどう折り合わせるのか?」という、あの古典的な命題に他ならない。

となり、建設的妥協が行われるだろう・行って欲しいということになるだろう。この見解はそれなりに蓋然性があり、第四巻ちひろ編*2で「みんなはリアルを生きていくんだな …自分はどうだろう?そうだな、僕は――」という趣旨の内心発言がある。この流れでは、上掲エントリのコメント欄であったやりとりだが、桂馬が単にゲームに没頭する毎日に戻っていくとは考えにくい。
個人的な感想を付け加えれば、この台詞は最終回フラグな訳で「え、もう?もうちょっと引っ張ってよ」と思わざるを得なかった。まあ、同誌の某執事コメディは初期の最終回布石を豪快に投げ捨てている&サンデーは長期連載化しやすい実績を考えると、回収は200話ほど先になるのかもしれませんが。
が。これが神知るのベストルートかというと、自分はそうは思わない。ここまで「桂馬もまた作品内ではリアルの一員に過ぎない」ことに注目した主張を見てきたが、ならばこちらにも注目すべきだろう。

「桂馬もまた『神のみぞ知るセカイ』という二次元作品の一員だ」

ということを。
桂馬は若干17歳にしてゲーム女子にしか興味がないという悟りを開いた仏陀なのだ。最適な妥結点を探るのが政治家なら、宗教家は人々を神の国に導こうとする。人間ならば理想と現実の狭間でもがき、その末に現実との政治結婚をすることもあろう。それはそれで面白い人間ドラマにはなる。だが、まったく個人的な感情なのだが、その結論では納得しがたいのだ。リアルと折り合いをつける物語は、自分一人の分でおなかいっぱいである。我々が二次元に望んだのは夢であって、現実の延長ではなかったはずではないか*3?पारमिता の先にある仏陀なら、「神様」桂木桂馬ならなんとかしてくれるっ…!
そう、桂馬は仮にも作品世界中の神ではなかったか。新世界の神と違って地上に落とされるべき倫理的な理由もない。神であろうと鍍金をしているのではなく(自称落し神ではあるが、これは日本語での日常用語としての神キターという程度での神だろう)、自然体で神なのだ。「ああ彼も人間だったんだ」という台詞は安心と落胆のどちらにも取れるが、神知るの読後にこの感想を抱くのは、自分の場合間違いなく落胆だ。


まとめて結論を述べれば、桂馬の着地点は「リアル」ではなく、その先であって欲しいというのが全く個人的な願望だ。希望的観測を付け加えるなら、掲載誌が少年誌である以上、リアルよりイデアルへという圧力は常にかかっているということだろうか。

*1:こういう意味では未読意味不明レビューでも、未読者に訴える効果はある。自分はこの手のレビューの価値を認めないわけではない、というか自分が新しい作品を購入する時は大いに参考にしている。

*2:今コミックが手元にないので何巻何編だったかやや記憶が曖昧。後日修正の可能性高し

*3:と言いつつWWIIを追体験するFPSやりたいなあとか思ったりもします。まあ、リアルのコピーを目指しているものはまた別枠ということで…