若年が選挙に行かないことによる利益誘導のなさと、利益誘導のなさによる選挙に行かないことのネガティブフィードバックについて所感

20台くらいの若者の話だ。「ネガティブ」と接頭辞がついているのは制御用語をそのまま持ってきただけなので、これ自体は「変化がなくなる方に行く」というだけの意味で中立的な単語だ。が、現状認識はやっぱり若者に「ネガティブ」な話になる。
今回の選挙での各政党のマニフェストは見ただろうか。自分も全部の政党のソースを見たわけではないが、ダイジェスト版もネットにはある。で、このダイジェスト版、国内への税金の割り当て方、パイの分け方に関する議題設定は「子育て・教育」「年金」「農業」といったところだろうか。この中で若年が受益者になれそうな公約はどれほどあるだろうか?
年金はとりあえず向こう30年は関係ないし、30年後には(年金制度が存続していれば)制度改革だの財源問題だのでモメているだろうことが容易に想像出来る。その時のことはその時決まるだろう。つまり、今回の選挙で関係あるのは既にもらっている人・もうすぐもらう人のどちらかだろう。
子育て・教育はどうか?高等教育への奨学金充実など次の若者への制度もあるが、基本的に幼児〜中等教育へのリソースの投入というものだ。子持ちの若者ももちろんそれなりにいるが、結婚出来るだけの収入・安定性がない人間の数も無視出来ないレベルだろう。
農業で若年者失業問題が解決?何を言っているんだお前は。目先の現実として、都市に出る農業の求人は年収40万とかいうどこの開発途上国だというレベルようなものだったりする。労働による自己実現を目指すとかでもない限り生活保護でも受けて食いつなぐ方がマシなレベルだ。どうでもいいけど農村で心を入れ替えようって自己批判して労働改造する文化的なアレに似てるよね。そもそも日本の「農家」は補助金あるからやってるなんちゃって兼業農家か、恐ろしく生産性の低い老人がやってる零細農家が過半だと思っていい。自給率アップのかけ声の下で投入される補助金は、土建権益がどうとかいうレベルではない文字通りのバラ撒きだ。(そもそも「自給率」を上げることにどれほどの意味があるのか疑問なのだが、それはまた別項で。)
以上ざっと見たところ、若年にクリティカルに関係する政策はそもそもマニフェストの重要課題として挙がってすらいないという、実に素晴らしい状況となっている。年金問題の比重が高いことを考慮すれば、若者どころか中年も相対的にスルーされていることになるが。
年配の方は実に直球だ。自分達に年金をだしてくれると約束してくれる政党・候補者に票を入れる。年金は納めたから当然という声が聞こえたので一応返しておけば、国庫負担、つまり税金を一部充てる公約をしている党が多いという時点で単純に払ったからどうとか言うべきではない。

ではなぜ若者の問題が政策課題にならないか?若者が投票に行かないからだ。なぜ若者が投票に行かないのか?若者の利害を代表する政党も候補者もほとんどないからだ。なぜ若者の利害を代表しようとしないのか?若者が投票に行かないからだ。ひどいループが完成している。
このループを打ち破るためには、まず若者の利益になる政策とは何かを決定しなければならない。この点、年金や医療費といった直裁な議題設定が出来る高齢者よりハードルは高いのは事実だろう。個別の政策としてふさわしいものはなかなかない。(ホリエモンあたりは全国民に8万円とか10万円の所得保障をしてしまえ!とか言っているが、やるならやるで誰かが経済活動をしなければならない。)
が、抽象論なら一言で済む。「長期的な経済成長、パイの拡大」しか有り得ない*1。潜在成長率を上げるということだ。
長期的な成長は、一過性の景気対策とは違う。違うというか、その場の景気対策が生産性の向上に結びつくとは考えにくい。例えば道路工事をやってもその間は雇用があるかもしれないが、終わればそれまでだ。この手の景気対策は金も人も動かさなきゃいけないということでハードインフラが定番だが、日本の場合国全体として元の取れるインフラの投資は概ね完了していると思っていい。途上国ならそのインフラを活用した経済成長が考えられるが・・・事業が終われば景気に対する効果はそれまでだ。もちろん今回はかなり派手な不景気になったので、一時的でもいいから景気対策をするのはそれなりに意味はあることはあるはずだが。で、どうせバラ撒くなら定額給付金使えば平等だぜ!という流れだったはずだが、何の因果か景気よりも民主党の浮揚に効果が上がってしまった。(この辺の因果関係は風吹桶屋より理解不能なのだが・・・)
あるいは、若者への利益誘導なら若年の就業支援でもすればいいのでは?という声もあるかもしれない。そのあたりはやるのが難しい・やっても微妙じゃない?という意見が下のエントリにまとまっている。
http://workhorse.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_bdfd.html
関係のある部分をまとめれば

  1. 職業訓練が正社員に内部化されているから外部で有効な教育を行いにくい
  2. 特定の属性を持つ人を雇うように誘導するのは著しく不公平
  3. そもそも30前なら自力で割と何とかなることが多い

2.に関してはそもそも利益誘導を行おうというのだから不公平上等という話ではあるが、3.自力で何とか出来るとすれば政府が直接介入するのは若年にも雇用側にも不幸と言える*2
そうなると、消去法的だが所得保証をするにしても非正規雇用として働いてもらうにしても、長期的に経済成長をしていないと何も始まらない。どうすればこれ以上潜在成長率を伸ばせるのかは分からない(分かれば苦労しない)が、確実なことが2つ。今回の選挙で長期的な成長の方法を示している政党はない。その点で幸福実現党は大減税をすると言ってはいるが、6%は無理だろう・・・。小泉政権構造改革路線は1つの方針だったはずだが、金融危機が重なって「小泉政権下で規制緩和が行われた結果金融危機が起こり派遣労働者の雇用が不安定になり、国民の食の安全が脅かされている。行き過ぎた構造改革は見直さなきゃいかん」みたいな空気が充満してしまっている。カギ括弧の中は突っ込みどころ満載なのだが、マスコミが国民の平均的な意識を映しているとすれば、世論はこういうことになっているらしい。
もうひとつは、社会保障にいくら金を使っても生産性は上がらないだろうということ。もちろん福祉や介護分野に落ちるお金が大きくなればその周辺で雇用は発生するが、それは前述した公共事業みたいなもので税金が切れたらそれまでという性質のもの。公共事業みたいな、というよりまだ何らかの副次効果が期待出来る分インフラ整備系はまだマシと言うべきか。社会保障費の内訳を見てみると、福祉よりも年金の方が圧倒的に多いのだが。他にお金をつぎ込んでも成長に繋がらない分野代表として防衛費が挙げられるが、ただでさえ隊員の給料でかなりの部分が飛ぶ自衛隊の金を減らしてどうするんだという話になる。現状の自衛隊ですら備蓄・備品不足で実戦能力弱いのではという疑問が出ていたりもするというのに(日本に限らず平和な軍隊の評価はそんな感じのところが多いが)。長くなるのでこれ以上の安全保障関連の話は別項で。ともかく、削減のやり玉に挙げられる防衛費と公共事業費は合わせて12兆円といったところ。一方の社会保障関連は22兆円。多ければ削れるというものではないが、防衛費と公共事業費だけを削るというのはバランスを欠きすぎる。大体公共事業にはいらないものもあるが、みんな必要だと思う類のもの、これから新規にするべき類の事業(羽田とか、リニアとか。電波インフラも入るかな?)もあるので1兆円も削れれば万々歳だろう。

ここで本エントリの趣旨に立ち返って、若年者の利益になる税金の分配はどんなものだろうと考えてみると、新規のインフラ整備は”長期で儲かる”可能性が高い。が、10年程度で元が取れるものでもない。つまり、この手の事業は老年の方には相対的に損ということだ。逆に、ここを削りますよー!とアピールすれば票になり得るということでもある。もちろん殺し文句は「公共事業の無駄を削ります!」となる。あるいは所得税法人税の恒久減税をして、社会保障費を削る場合。若年なら社会保障費が減っても、30年か40年間の成長率が上がれば元が取れる。一方、高齢者は社会保障費を削られたら間違いなく損をする。「安心社会、高福祉のために多少の負担増はやむを得ない。国民の皆さん協力してください」と言われたら、受益者はいくらでも我慢出来るだろう。だって高福祉なら収支はプラス、減税しても今年来年で経済成長するわけではないのだから。
念のため書いておくが、自分は増税高福祉路線に票を入れる年配の方が、若年から搾り取ってやろうなどと考えていると思っているわけではない。本人達は、無駄は無駄だし、安心のために必要な出費は我慢しなきゃ、という以上の意識は持っていない(はず)。ただ、無意識に自分にとって最適な選択をしているだけの話。政策の善し悪しは善意の量で量るべきではない。

思うに、高齢者への福祉を厚くする政策は、当初人口ピラミッドが三角形か、あるいは最低でも垂直だという前提だったのではないか。三角形なら高齢になるまで「生き残った」人の面倒を見るのはそこまで負担にならない。また、票田的にも下の方がボリュームゾーンだから高齢者福祉を訴えてもやり過ぎにはなりにくかっただろう。翻って日本は、出生数が逆ねずみ算、一番人口の多いところがこれから年金もらい始めるというかなり歪な形になっている(地球環境のために人口を減らそう運動としては理想的だが、人口減少の過渡期は相当辛いことになる)。年々減る子供の数を横目に見ていると、正直「これ年金とか将来持つわけねーだろ、俺ら払い損になりそうじゃね?」と思わざるを得なくなる。だって自分達が上の世代支える自信すらないんだもん。所得が倍増するなら別だが。
これはある意味釣りエントリだが、20台半ばニートの本音であることに違いはない。若年層の利益を代弁する政党が皆無に見えたから敢えて書いたのだが、若者の政治的な意見というのは昔から丁重に無視されるものだったのだろうか?そうでないなら、「諸派」でもいいから出て来て欲しいところだ。

*1:自分の発想が貧困なだけかもしれないので、これ以外がある人は是非教えていただきたい。

*2:もっとも個人的に知っている同年代の範囲では、1.社員教育が内部化されているせいで新卒カードの切り方を失敗すると「まともな」正社員は厳しいという印象だ。ロースクールに通っていたが途中で辞めて、正社員として就職した先が超絶ブラック、結局辞めたというのがいる。経緯は違えど現在無職もしくはフリーターという同郷も五指に余る。1人は自分の都合で無職のようだが、他はとりあえず食いつなぐためにフリーターをやっていた。もちろんマトモに新卒で正社員になった人ももっといるが、このまま格差が固定化されるかと思うと正直ぞっとしてしまう。既卒をもう少し採用しやすいような制度作ってもバチは当たらない・・・というか、10年後の不安定な雇用の人間が減ると思うのだが。