カップリング記法は×と*を使い分けよう運動

結論:受け攻めの概念が曖昧なカップリングでは×(クロス積)ではなく* (畳み込み、convolution)を使うべし

まず×について

腐女子の皆さんがカップリングを省略せず、受け攻めを明示するときに記号 ×を使っていることはかなり広く知られている。
例:)吉鷲は吉岡×鷲巣、吉岡攻めの鷲巣受け # 吉岡は鷲巣の部下、「白服」の一人
何故×なのか?二人を組み合わせる中置記法なら、*でも+でも・でも=でも良さそうなものだ。が、実際には腐臭を強く出す場合は特に、×が好んで使われる。これにはれっきとした理由があるのだ*1
クロス積の重要な性質として、

  • 非可換で、掛け合わせる順番を変えるとマイナスがつく。
  • 同じもの同士を掛け合わせるとゼロになり、
  • 違うもの同士を掛け合わせるとその2つのどちらも持っていなかった次元に行く

というものがある。何ということか、このクロス積の性質に受け攻めの概念から、なぜカップリング論争が戦争になるのかまで集約されているではないか!
順に説明しよう。可換でないと言うことは、×の前後に書く順番で意味が変わるということだ。上に書いた例をもう一度引っ張って来ると、吉岡×鷲巣と鷲巣×吉岡は別物になるということだ。前者なら鷲巣様に近くでお仕えしつつも自分の思いを伝えられない、でもある日あのことがきっかけで鷲巣様に思いをぶつけた、鷲巣様っ・・・もう我慢できませんっ・・・ざわっ・・・や・・・やめんかっ・・・でも・・・お前ならっ・・・ざわっ・・・という妄想が想像できるだろうか。いや想像っていうか先日買った灰汁多ていうサークルの同人誌の筋書きそのままなのだが。一方鷲巣×吉岡なら、横暴な鷲巣様が「ククク・・・ヘマをした罰じゃっ・・・」と言いながら吉岡にお仕置きをする、でもそんな吉岡は実は鷲巣様に罰して欲しくてヘマをしていると、そんな感じにだろうか。実例見たことないんで的外れなこと言ってるかもしれないが*2
また、符号が反転するということは、吉×鷲と鷲×吉が同じ次元の上にあるけど正反対のものということになる。どちらも両思いという同じ次元の上だけれど、かたや吉岡が積極的に行く、一方では鷲巣が積極的に行く。二人の関係という同じ次元の上にあるにもかかわらず、正反対になってしまう悲劇!人間違う次元のモノとは無関心・無関係でいられるが、同じ次元の上にいて、正反対のものであったら戦争が起きるというのはもはや必然。かくして今日もカップリング論争という宗教裁判が開かれるのである。
もう一つ、同じもの同士を掛け合わせるとゼロになるという性質。腐った本では違う性質を持った人同士を絡ませるというパターンが多い。主従、先輩後輩、生徒会長と役員、作家と編集etc... 両方とも同輩では受け攻めが成立しにくかろう。同級生同士などの場合でも古×キョンのように何らかの差がついていることが多いようだ。某兄貴のガチホモ動画のように双方ヤる気で突っ込み合いなどというものは少数派のはず。本来交わることのない二つであればあるほど大きくなるというのもクロス積自体の持つ性質である。
さらに、掛け合わせるとオペランドからは想像もつかない世界が広がることが往々にしてある。少なくとも、その手の発想に慣れていない人には全くの異次元である。ジャンプ漫画を読んでいた少年達の一体何割がテニヌを読んでそういう発想に至るだろうか?若き日の私は封神演義太公望と揚ゼンがナニをしている本を読んで、文字通り何が起きたかの理解を脳が拒んだものだ。

百合はどうなのか

まず、受け攻めの概念が何にでも成立するだろうか?この問いかけ自体、成立しないこともままあるという答えを内包しているのだが。恐らく今年度上半期で一番見られるであろう百合アニメ、咲-saki-から例を引いてみよう。
例1)福路キャプテンは二次創作では往々にして黒化して池田を虐めるキャラクターとして描かれる。こういうケースではキャプテン攻め池田受けと言ってもそれほど語弊はないだろう。
例2)二人でいるとATフィールド全開で周囲ドン引き誰も近づけなくなる、主役校の咲とのどっちのカップリングはどうか?これは見る者によって色々差が出るカップリングである。

  1. ドSな咲が攻める、ガチレズのどっちが迫るというケースでは受け攻めで説明出来よう。ふたなりものも受け攻めがあるという点では同類である。
  2. 一方で、(ある意味原作に忠実に)双方同じ程度・同じ質の積極性を維持し続け、どちらが主導権を握っているとは言えない類の二次創作も存在する。そもそも原作での二人がするのは指切りだし、アニメでも両手をそれぞれ繋ぐというものだ。胸の大きさ以外はシンメトリーな図と言えよう。

例2-2のケースでは、クロス積×を使うと色々おかしなことになる。咲が前でのどっちが後という場合と、のどっちが前で咲が後で正反対の結果になるというのはおかしい。中置記法で前後が生じるのは人間の文字に対する制約から来るものであって、順序がどちらでもいいというよりも強い、順序が あってはならない という制約がつくケースでは書く順番に依存しない記法が求められる。
次に、同じもの同士ではゼロになるという点。境界チェックをかけてみよう。一卵性双生児の姉妹でアネとイモウトという区別のないカップルは有り得るか?Yes, it sure does exist. もっと言えばシンクロしすぎて溶けてる状態だってアリだろう。やはりこのケースでも×はふさわしくない。

ようやく畳み込み h*g の提案

畳み込み h*g も中置記法だが、これには次のような性質がある。

  • ビッグバンから世界の終わりまでの2つ対象の関係を内包する
  • 可換である。掛け合わせる順序に結果が依存しない
  • 2つの対象から導かれるのは2つの対象の次元と同じである

下の方にたたみ込み積分の式があるので、ヒマな人はhとgがtの初めから終わりまで寄り添う姿をじっくり味わって欲しい。hはharamuraさんのhでgはmiyanagaさんのgである。ここには、完全に同等な二人が、受けも攻めもない、ただくっつきあっている映像が幻視出来るのだ。
この手の妄想は決して主流ではないが、一定の需要があるのは間違いない。こないだのコミケで買ったエイラ*サーニャと咲*のどっち同人誌では、二人は立場も心も対等ということがエロシーンで描かれていた。コミケの世界に限れば、大手でなければ供給があるということは需要があるということを示している。可換な百合は、私だけが欲しがっているわけではない傍証だろう。


というわけで、ひきこもりにっき。では応援が咲*のどっちとタコス×京太郎と一*とーかとキャプテン×コーチ×池田ともも*かじゅをtackmanする!*3

このエントリで意識した×と*の数学的な背景

これを書くのは無粋な上に分かる人が少なそうなのだが、それでも一応書いておく。車椅子のホーキングは数式が一個入るたびに本の売り上げは半分になるとアドバイスされたそうだが、ただでさえアクセスの少ないこのブログのPVは8分の1になるのだろうか。
×は三次元ベクトルの外積のつもりで書いた。
 A = \left( a_1 \\ a_2 \\ a_3 \right) , B = \left( b_1 \\ b_2 \\ b_3 \right)
 A \times B = \left( a_2 b_3 - a_3 b_2 \\ a_3 b_1 - a_1 b_3 \\ a_1 b_2 - a_2 b_1\right)
*は関数のたたみ込みである。
 (g * h)(t) = \int _{-\infty} ^ {\infty} g(T - t)h(T) dT
数式を読む気になってくれる人なら可換だ非可換だの時の初めから終わりまでとかいう比喩のニュアンスは分かってくれると思う。


ただそこに畳み込み積分の定義が存在するだけで、tackmanにはこれだけの妄想が可能です。

なぜ百合では18禁でも*が有り得るのか

身もフタもない結論だが、男女の構造的な違いからではないか?少なくとも自分には、女性の深層意識がどうの身体性がどうのという話よりはこの方が説得力がある。
BLの関係が非可換なのは、男性のこけしを突っ込み合うという図があまりに現実離れしているからではないか?BLはファンタジーということで、腐女子の方々はやおい穴という偉大な発明をされているが、いくら現実にはない器官を創造するにしてもそれなりの迫真性はなければ良い妄想にならないだろう。
それに対して18禁百合ものの場合、物理的にシンメトリーというのが可能である。可能というだけであって、そういう作品は比較的少数という印象ではある。ちゃんと統計取ったことはないが。
個人的には非対称GLは百合である必要性が薄い気がするのでスルーしがちだ。・・・さらに個人的な感想を付け加えれば、対称性には美しさがある。対称性はこの世界を統べる原理だってどっかの物理学者も言ってたらしい。咲をデジタルの世界に投影したらのどっちになり、のどっちがオカルトの世界に出かけると咲になるのだ。咲の胸の高さがなだらかなガウス分布だから、のどっちのそれもまたピークが高いガウス分布になるのだ*4。二人は双対!

*1:念のため言っておきますが、理由は単に自分が記号から妄想しただけです。加えて一種の理系ジョークでもあります。でも百合カップリングの全てを無理して受け攻めの概念で説明する必要ないとは思っています

*2:自分が納得出来る妄想にしようとしたら、吉岡誘い受けになってしまって差が分かりづらいなあ・・・

*3:意味が分からない人はソヴィエトロシア式倒置法あたりで検索をどうぞ

*4:フーリエ変換してみるとか