陵辱系ゲーム禁止に関連した言説について

http://slashdot.jp/yro/09/05/29/0130256.shtml に関連した話です。陵辱系ゲームが禁止されるかもって話。
#内容に関してあれこれ言うのは他の人が色々やってるだろうし、お互いの主張が表現の自由は大切だvs女性の権利を守れという、およそ次元の違うところで永遠に交差しないであろう状態になっているので正直マトモに立ち入りたくない。ただし自分個人の政治的ポジションは「表現の自由が大切」「想像上で留める限りは何やっても合法」だということは表明しておきます。趣向は陵辱モノは苦手です。二次元ならまだ見られなくはないと思うけど、実写陵辱モノは多分見たらトラウマります。以下のエントリでは私のそういう偏向を考慮に入れてご覧ください。
さて、前置きが長くなったけど、それに関連したエントリがこちら。
http://d.hatena.ne.jp/blacksorcery/20090523/p1
暇なので、このエントリを分析というか解析してみたいと思います。
名詞が出てくるとややこしいので記号化しますね。

:= 右辺を左辺の別名として定義という意味で使っています
(演算記号) Pが成立するならばQが成立する := P -> Q (※ NOT(P)∨Q、選言 Pが偽ならあらゆるQが成立する)
(記法) 命題Pを満たす集合X := X.P
(記法) 命題Pを満たすXが存在する := ∃X.P
(命題)Xは男性である := M(X)
(命題)Xは女性である := F(X)
(命題)XはYを差別している := Dcm(X,Y)
(命題)Xは陵辱ゲープレイヤーである := Ply(X)

さて、ここで定義した記号を使って上のエントリの内容を分析してみましょうか。

次にレイプエロゲー愛好者がマイノリティか否かという点だが、ある意味マイノリティだと思う。

マイノリティである、はこのエントリの中では差別を受けていると言い換えていいでしょう。∃X.Dcm(X,Y.Ply(Y))が真であるということですね。

女性差別の世界ではマジョリティ側である男性の一員で、男性であるからこそそういったフィクションを楽しめるのに、この問題を語るときに自身の男性という属性を外して少数であることだけを語ることが正しいだろうか?

この段落は3つのパートからなります。
女性差別の世界ではマジョリティである男性の一員で」の部分。これも命題にすると二つです。(全ての)男性は女性差別をしている、という Dcm(X.M(X), Y.F(Y)) が一つ。もう一つは陵辱ゲープレイヤーが男性であるということ。M(X.Ply(X))です。
次は「男性であるからこそそういったフィクションを楽しめる」という部分。本筋に関係ないのでスルーします。
「この問題を語るときに自身の男性という属性を」この部分は少し分かりにくいですが、M(X.Ply(X))と同義です。

レイプエロゲー愛好者の欲望の前提である男性という属性をまず認めると、根本的な問題として女性差別がある限り、まずは女性差別の問題について考慮すべきで、その上で初めてレイプエロゲー愛好者の抱える問題を語るべきだ。

この段落がここまでの結論ですね。あらたに追加される命題は

Dcm(X.Ply(X), Y.F(Y))

で、真偽のある命題ではない主張として

{∃Y.Dcm(Y, Z.F(Z))} なので、{∃X.Dcm(X,Y.F(Y))}を問題にし {∃X.Dcm(X,Y.Ply(Y))}は問題にしない

があります。改めてまとめると

(前提)
∃X.Dcm(X,Y.Ply(Y)) # 結論に関係ありません
かつ
Dcm(X.M(X), Y.F(Y))
かつ
M(X.Ply(X))
                                                    • -
(結論) Dcm(X.Ply(X), Y.F(Y))
                                                    • -
(主張) {∃Y.Dcm(Y, Z.F(Z))} なので、{∃X.Dcm(X,Y.F(Y))}を問題にし {∃X.Dcm(X,Y.Ply(Y))}は問題にしない

前提→結論を一つの式で書くとXとかYを使い回しているせいでこのままだとごちゃごちゃになります。集合に名前をつけておきます。

Man := X.M(X) なる X
Fml := X.F(X) なる X
Gmr := X.Ply(X) なる X

前提→結論を一つの式で書くと

{Dcm(Man, Fml) ∧ M(Gmr)}  ->  Dcm(Gmr, Fml)
= NOT(Dcm(Man, Fmr) ∧ M(Gmr) ∨ Dcm(Gmr, Fml))

さて、準備が整ったので突っ込みを入れましょうか。
まず前提→結論の流れですが、たしかに命題論理的には問題ありません。Dcm(Man, Fmr)、M(Gmr)のどちらか一方、もしくは両方が偽ならばNOTの中身が偽になり、式全体は真です。両方真のときはMan⊃GmrなのでDcm(Gmr,Fml)が真になり、式全体は真になります。つまりこの式は恒に真、恒真です。
じゃあ何が問題なのかというと、前提としている命題に眉唾物があります。って言っても結論に関係ある前提は2つしかないのですが。M(Gmr)ですが、まあ女性でもする人はするんでしょうが・・・真としてもさほど問題はない・・・かな?あまりそのへんの事情に詳しいわけではないので保留します。もう一つ、Dcm(Man,Fml)の方。この命題では全ての男性が女性差別者であるということになります。この意見に賛同するのは相当アレげな感じのフェミ入った人だけでしょう。命題の真偽は賛成者が多かったり少なかったりで真偽が決まるというものではないですが、件のエントリの議論がかなりの少数しか認定しないようなことを論拠にしているということは考慮に入れてもいいでしょう。
もう一つ突っ込みどころはあって、いちいち訳の分からない記号を導入した理由はこっちだったりします。百歩譲ってDcm(Man,Fml)を真としたとしても、「主張」の内容は到底マトモとは言い難いものです。先に導入した集合の名前を使って書き直し、なおかつエントリ主が言いたかっただろうことに意訳すると

{Dcm(Gmr, Fml)} なので、Dcm(Gmr,Fml)を問題にし ∃X.Dcm(X,Gmr)は問題にしない

ということになります。へー、誰かを差別しているならその人(あるいは集団)を差別してもいいんですね!じゃあ陵辱エロゲーマー差別してるあなたを差別してもいいんですね!違うって?女性差別の方が問題だからそっちを優先すべきだって?陵辱エロゲーマーの差別より女性の方が大事?やっぱそれ差別じゃないか!

価値観については取り合わないと書いたが、少しだけ

  1. 「女性が陵辱され無理矢理妊娠させられ堕胎させられる」というフィクションがあり、楽しめるのは、そういった差別的な欲望に基づいていると思うか?
  2. このゲーム自体に女性差別を見いだすことが出来るか。

ぱっと見ると1.に同意したら自動的に2.にも首肯してしまいそうですが、1.と2.は直接論理的なつながりはないです。1.と2.が同値であるとしたければ「差別的な欲望」と「差別」が同じであるとしなければなりません。私は「一緒じゃないの?」とノータイムで思う人にには、差別心への向き合い方に疑問を持つことにしています。人間生理的な嫌悪感というものは誰でも持っています。生理的なものでない場合でも、幼少の頃からの刷り込みで社会的な差別感覚が身にしみついてしまっている場合もあります(ex.関西圏の人の部落民への差別とか。関西のオッサンは今でも平気で「あいつらは生まれが悪いからしゃーないな」とか言います)。こういう、身に染みついているせいで自然に感じてしまうのが「差別的な欲望」です。「差別的な欲望」はタイプが面倒なので以下「差別心」とします。ブッダにでもなって人間やめない限りこれは一生ついて回ります。「そんなもんねーよ」と思っている人は、その差別心が自分にとって当たり前すぎてスルーしている可能性を考えるべき。(電車の中で知的障害者が騒いでたらウザいとか思ったことはないですか?)ですが、そういう差別心は、教育や意識改革でコントロールすることができます。言動に表さないようにするという行動面で自制することも、「あれはキモいと思ったけど、これ差別心だよな」と内省することもできます。逆に、そういうコントロールが効いてなくて差別心が全開になっている状態が「差別」です。差別心を持つことと、差別の間には溝があるのです。というか溝がない人は作るべき。
ここまでの主張がただのレトリックだと思う人は、差別をなくす=差別心を心から追い出す だと思ってませんか?それ無理。本気でやろうとすると脳の手術とか薬品とか要ります。人間の本能のいくつかを殺さないと不可能でしょう。
#差別心が生来薄いという人はそこそこいますが、それ自体は本当は遺伝や環境が良かったというだけであまり自慢にはならないんですよね。個人的には差別心がすさまじい量だけど、差別はしてないよって人の方を尊敬します。
本当は以上の前提を頭に入れた上で、ようやく本題に入れるんですよね。「陵辱エロゲは女性差別か、つまり二次元での行為もまた差別か」っていう。陵辱エロゲが差別心を満たすためのモノかと訊かれれば、9割方イエスなのでしょう。自分自身は陵辱モノはやらないのでこの辺は実際にプレイしてる人に訊かないと分かりませんが。だけど、だからと言ってこれが即ち差別だという結論が演繹されるかというとノーです。
その上で、二次元での陵辱は「差別」である、という主張をするならば、それは価値観が違うね、政治的な主張だよねという話なのでそれ以上私は議論する気はありません。私は「それは表現の自由に抵触する」という(政治的)主張をします。あとは国会なり裁判所で決着をつけましょうということで。私は積極的な活動をするほどのバイタリティはないので、表現の自由を主張する活動家の方には是非頑張っていただきたいです。

さらに蛇足

陵辱エロゲが存在すること自体に我慢がならん!という感覚は多分分かります。例えば自分の場合中国の抗日りーべんぐいつ殺戮ゲーとかあるの嫌なのは嫌だし。でも、紋切り型の回答ですが抗日ゲーやってる人が日本人見たら斬りつけてくるかっていうとそんなことないですしね。
あとエロゲの場合はゾーニングも一応やってるし、パッケージちゃんと見れば陵辱モノって分かるから見たくない人の目にまで入るわけじゃないですよね。ゾーニングとか甘いところはあると思うので、何か基準を作ってCEROのマークみたいなのをつける必要とかはあるかなあとは思いますが。