トレード不可は誰の利益か?

最近自分のやってるネトゲで「リアルマネーで購入可能、ゲーム内でのトレード不可」というアイテムが販売された。これまでもリアルマネーで購入可能というアイテムは販売されてきたが、ゲーム内でのトレード不可というのは初めてである。つまり、これまではゲーム内マネーで買えたのが、今回のものはそれが出来なくなったわけだ。で、このトレード不可というのは一体誰の利益になるのだろう、という疑問である。
この問題を考えるためにまずは下のようなテーブルを作ってみる。

プレイヤー名 リアルマネーでの評価額 ゲーム内マネーでの評価額
a 100 100
b 110 90
c 150 160
d 40 30
e 50 90
f 60 130
... ... ...

見たまんまであるがある商品が各プレイヤーにとってリアルマネーではいくらの価値があり、ゲーム内マネーではいくらの価値があるかという表である。これを延々と並べていくとリアルマネーとゲーム内マネーの二軸の度数分布図が描ける。で、下のような図を描いてみることにする。

図で既に何が結論かネタバレしているが気にせず解説すると、まず汚い傾いた楕円が上述の二軸の度数分布図である。そして赤い横線がネトゲの運営会社が設定したアイテムのリアルマネーでの価格。
アイテムにトレード不可の属性がついていると、楕円の中でなおかつ赤いラインより高いリアルマネーでの評価をしている人たちが商品を(運営から直接)購入することになる。図でいえば赤とオレンジの領域の人たちである。
一方、アイテムがゲーム内でトレード可能だとすると、ゲーム内でもアイテムに値段がつくわけで、図の水色の縦線がそれである。この場合赤い領域の人たちは「自分の評価額と比べてリアルマネーで買うと安くついて、ゲーム内マネーで買うと高くつく」のでリアルマネーでアイテムを購入する。一方水色の領域の人たちは逆にゲーム内マネーでアイテムを購入する。オレンジ色の領域の人たちはリアルマネーで買ってもいいし、ゲーム内マネーで買ってもいい*1
ここで「あれ?ゲーム内マネーで買う人の分のアイテムはどこから供給されるの?」という話になるが、これは図の白色の領域の人たち―アイテム自体の価値を認めていない人たち―が運営からアイテムを購入してゲーム内で売ることで成り立つ。いわゆる公式RMTである。
ここまで来たらトレード不可属性がついている場合とそうでない場合の厚生・・・誰がどれだけ得をしたか、が分析できる。
まずユーザ。赤色の領域の人たちはトレード不可の有無に関わらず厚生は変わらない。だってどっち道運営からリアルマネーでアイテム買うんだもんね*2。水色の領域の人たちは、トレード不可の場合はアイテムを買えないので厚生はゼロである一方、ゲーム内でトレードが可能ならアイテムを手に入れることができるので厚生は増加する。オレンジ色の領域の人たちは、トレード可能な場合選択肢が増える(リアルマネーで買うかゲーム内マネーで買うか)のでより得な方の選択肢を選べばいいので厚生は増加する。白色の領域の人たちは、トレード不可の場合は当然厚生はゼロだが、トレード可能な場合はリアルマネーでの価格とゲーム内マネーでの価格を見比べて得するとなればアイテムをリアルマネーで購入してゲーム内で売りさばき、損するとなれば何もしなければいいので厚生は増加する。以上一行でまとめるとユーザの厚生は増加する。
では運営の利益はどうなるのか?これは単純で、売っているモノは運営にとってはコピーフリーなのでリアルマネーでの価格×売り上げ数がそのまま運営の利益になる。そしてリアルマネーでの価格にかかわらずトレード不可属性はついていない方が売り上げ数が大きいのはもう自明だろう。運営もゲーム内トレードは可能な方が得をする。
以上より、ゲーム内トレードを不可にした癌砲は馬鹿ということになる。

以上で今回の分析は終わりなんですが・追記

こうやって考えていくと、少なくとも短期的な利益だけを見た場合(非公式の)RMTネトゲ運営会社が禁止する理由はないということになる。大体近頃のMMOというのは月額料金がかかるものにしろ基本無料のものにしろゲーム内アイテムを売るという形で売り上げを出している*3。これらアイテムがゲーム内でトレード可能で、なおかつRMTが「健全に」行われているならばRMTは運営に利益をもたらすはずである。RMTには理論上リアルマネーとゲーム内マネーの循環を円滑にする効果があるはずなのだ。
ただ、はてなキーワードRMTでも見てもらえば分かるように現状のMMOはRMTが大規模に行われるとゲーム内が殺伐としたり、金銭授受にともなうトラブルによりタイトル自体に傷がつく可能性、さらには社員によるゲーム内マネーの不正な水増し犯罪が起こる可能性ある。というか上述のことは全て過去に起こっている。それに対する運営会社の解答の一つがトレード可能なアイテムによる公式RMTなのだろうが、なんとも迂遠ではある。ゲーム内マネーとリアルマネーの円滑な取引という観点からは到底効率的とは言えない方法だろう。つまり運営の利益とユーザの厚生を最大化していない可能性があるということだ。ネトゲ運営会社は「健全」「円滑」「直接的な」RMTをケアするという選択肢も考慮に入れていいのではないだろうか。

*1:最大限合理的な行動をとるならば自分の評価額の高い方のマネーで買うだろう

*2:一応リアルマネーで購入した人たちにとってはレアリティが下がると「見せびらかせない」ようになるため厚生が下がる可能性はある。が、実際のゲーム中ではリアルマネーを使うのは馬鹿という風潮がある(癌畜ぷぎゃーというアレである。分かる人だけ分かればおk)のでむしろ厚生は上がる可能性があるくらいである

*3:デスペナ軽減とか移動力アップとかその手の「サービス」もトレード不可なゲーム内アイテムとみなすことができる